新刊です。正確に言うと、平成22年(2010)にハードカバーで刊行されたものの文庫化ですが。 

『文士の料理店(レストラン)』 

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2013年6月1日 嵐山光三郎著 新潮社(新潮文庫) 定価670円

「松栄亭」の洋風かきあげ(夏目漱石)、「銀座キャンドル」のチキンバスケット(川端康成)、「米久」の牛鍋(高村光太郎)、慶楽」のカキ油牛肉焼そば(吉行淳之介)、「武蔵」の武蔵二刀流(吉村昭)──和食・洋食・中華からお好み焼き・居酒屋まで。文と食の達人厳選、使える名店22。ミシュランの三つ星にも負けない、名物料理の数々をオールカラーで徹底ガイド。『文士の舌』改題。(裏表紙より)
 
長大な詩なので全文は引用しませんが、大正11年(1922)に発表された光太郎の詩で、「米久の晩餐」という作品があります。浅草で今も続く牛鍋屋・米久さんで、詩人・尾崎喜八と牛鍋を食べた時の光景を詩にしたものです。
 
この書籍によれば、米久さん、メニューは牛鍋のみ。畳敷きの大広間に一、二階合わせて三百席。食事時ともなればもうもうとわき上がる湯気の中、ものすごい喧噪だとのこと。

光太郎の「米久の晩餐」にも、自分たちだけでなく、周囲の客やアマゾン(女中さん)の様子、会話が生き生きと活写されています。光太郎曰く、「魂の銭湯」。
 
本書では、カラー画像もふんだんに使っており、非常に食欲をそそられます。

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レポする嵐山氏の筆も、光太郎に負けず劣らずあますところなくその魅力を紹介しており、思わず行きたくなってしまいます。
 
さらに森鷗外や夏目漱石など光太郎と縁のあった人物や、光太郎の項ではないものの、光太郎も足を運んだ銀座資生堂パーラーなども取り上げられています。
 
是非お買い求めを。
 
ちなみに嵐山氏には、同じく新潮文庫に『文人悪食』『文人暴食』というラインナップもあります。「文士の食卓それぞれに物語があり、それは作品そのものと深く結びついている」というコピーの『文人悪食』では、やはり光太郎が取り上げられています。
 
【今日は何の日・光太郎】 6月16日

大正15年(1926)の今日、父・光雲が東京美術学校名誉教授となりました。