明治古典会七夕古書大入札会、冊子の目録が届きました。頒価2500円ですが、以前、大口の買い物をしたということで、無料で頂きました。ありがたいことです。

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「たかが目録が2,500円?」というなかれ。A4判280余頁、カラー図版多数の豪華なものです。この時代の文学者の位置づけ的なものも表れ、後に「平成24年頃にはこの作家が人気が高かったんだ」という資料にもなります。
 
時間があったので、近代文学関連のみ最低入札価格の高額ランキングを調べてみました。あくまで業者が設定した最低入札価格ですので、実際にいくらで落札されるかは不明です。ことによると応札なし、ということもあり得ます。また、今年の出品物に限っての話ですので、ご了承下さい。これがイコール現代の作家の人気ランキングというわけではないということです。出品物の状態にも左右されますし、たまたまエントリーのない作家もいますから。
 
150万円以上に設定されているのは次の通りでした。
 
 岩波茂雄宛宮澤賢治書簡 500万003
 永井荷風草稿 400万
 更級源蔵宛高村光太郎書簡9通 署名本9冊付 350万
 芥川龍之介未定稿 300万
 森鷗外書巻「古稀庵記」 220万
 正岡子規宛夏目漱石書簡 200万
 斎藤緑雨採集草稿 樋口一葉・幸徳秋水関連 200万
 夏目漱石 我輩ハ猫デアル① 150万
 野呂邦暢草稿 150万
 
やはり書籍は「猫」1点だけでした。他は肉筆物です。堂々の1位は、賢治の書簡。夭折ということで、賢治の書簡は非常に少ないのでこの値段もうなずけます。宛先も岩波書店の社長で、メジャーどころですし。
 
光太郎の書簡が第3位ですが、9通セット、署名本9冊付と言うことで、一種の人海戦術のようなものですね。それを言ったら野呂の草稿も約150枚で150万ですから、もっと短いものだったらランク外です。
 
「猫」①以外、書籍だけに限定して高額商品を調べたところ、以下の通りでした。何冊もセットで出ているものは除きました。ただし、「猫」は元々全三巻ですので除いていません。
 
 宮澤賢治 『春と修羅』① 78万002
 中原中也 『山羊の歌』 60万
 宮澤賢治 『春と修羅』② 50万
 北原白秋 『邪宗門』署名入り 50万
 上田敏 『海潮音』40万
 夏目漱石 『我輩ハ猫デアル』② 40万
 与謝野晶子 『みだれ髪』 40万
 高村光太郎 『道程』 40万
 神崎武夫 『寛容』 40万
 太宰治 『駈込み訴へ』 40万
 福永武彦 『福永武彦詩集』40万
 
同じ「猫」でも、40万の出品もあります。白秋の『邪宗門』は署名入りという付加価値があります。光太郎『道程』は同率第5位ですね。金額がすべてではありませんが、光太郎ファンとしては、やはり嬉しいものです。それだけ認められている、ということですから。
 
「高村光太郎? 何それ? 全然人気がないからもう値段つかないよ」という時代が来ないでほしいと祈ります。祈るだけでなく、「光太郎はこんなに素晴らしい」ということをアピールし続けたいと思います。
 
それにしても、こういうものをポンと買えるのはどういう人なんだろうと、興味がありますね。こういうものを購入する方にお願いしたいのは、「死蔵しないでほしい」ということです。こういうものは日本国民共有の文化遺産ととらえ、研究等の用に役立てるべきだと思います。金額や希少価値にのみ拘泥して何ら世の役に立てず金庫にしまわれてしまっては、それこそ宝の持ち腐れです。活用されてこその宝です!