「お前はいったいどういう活動に取り組んでいるんだ?」ということをよく訊かれますので、紹介します。
 
基本は「光太郎の事績をまとめること」です。「光太郎という人物はこんな業績を残した」ということをできうる限り正確に、漏れなく、後世に伝えていかなければならないと考えています。
 
そのために、まずは光太郎本人が書き残したものの集成。光太郎の文筆作品については平成十年に完結した筑摩書房刊行の『高村光太郎全集』増補決定版全二十一巻・別巻一が最も信頼できるテキストです。一部、座談会や短い談話等は『高村光太郎全集』には収録されず、文治堂書店刊行の『高村光太郎資料』第三巻(昭47=1972)、第六巻(昭52=1977)がこれを補っています。
 
しかし、その後も光太郎文筆作品は続々と見つかり、北川太一先生と当方によってそれらの集成がなされ続けています。平成十一年から十七年までは『全集補遺』という題でワープロ印刷の小冊子として、連翹忌で配布。平成十八年にはそれらを一冊にまとめ、さらに新発見の文筆作品を所収し、『光太郎遺珠2006・4』(「遺珠」①)がハードカバーの厚冊で高村光太郎記念会から限定二百部で刊行されました。ちなみにこれは光太郎没後五十年記念を兼ねたものです。「遺珠」とは「拾われないで残っている珠」転じて「世人に知られていない傑作の詩文」(『広辞苑』)という意味で、北川先生の命名です。
その後も続々見つかる全集等未収録作品に対し、北川先生のご助言を頂きながら当方が編集にあたり、「光太郎遺珠」の題名を踏襲して、毎年の連翹忌の日に世に出しています。

平成19年・20年(2007・2008)は大島裕子氏編の「没後年譜」と合わせ、高村光太郎談話会から小冊子の形で刊行(「遺珠」②・③)。平成21年2009)からは野末明氏の高村光太郎研究会刊行の雑誌『高村光太郎研究』の中の連載とさせていただいており(「遺珠」④~⑦)、今後もこの形を続けるはずです。これらはすべて国会図書館、神奈川近代文学館他で閲覧が可能です。当然、『全集』未掲載のものですので青空文庫等では閲覧は不可能です。

『高村光太郎全集』が完結したのが平成10年(1998)。ちょうどその頃からインターネットが急速に発展し、さまざまな情報が得られるようになったことが大きく作用しています。
 
ここでは「遺珠」に収めた作品の全文を紹介するのは不可能ですので、目次のみ数回に分けて掲載します。「光太郎にこんな作品があったのか」「是非読んでみたい」という方はお知らせください。 

「遺珠」① 

 平成18年(2006)4月2日 高村光太郎記念会 北川太一・小山弘明編

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俳句4句            明42 津田青楓宛書簡より
短歌3首            大8 逸見久美編『与謝野寛晶子宛書簡集成』第二巻より
 〃 1首           昭5 木彫「栄螺」袋
散文「日本画はめちやめちや」  大元 『やまと新聞』第8525号
 〃 「辞書を喰ふ女優」    大8 『活動旬報』第1巻第1号
 〃 「外国映画と思想の輸入」 大9 『活動倶楽部』第3巻4月号
 〃 「創刊に寄する諸家の言葉」昭12 『詩報』第1年第1号
 〃 「詩集"陽とともに"を読む」 昭15 『石狩平原』第1巻第1号
 〃 「仕事場にて」      昭15 『新女苑』第4巻第5号
 〃 「「動力時代」読後小感」 昭15 竹中祐太郎詩集『動力時代』
 〃 「ことばの美に就いて」  昭18 『さいかち』第15巻第1号
 〃 「新しい女性美」     昭18 『青年』第28巻第1号女子版
 〃 「島田正詩集『結婚』序」 昭21 島田正詩集『結婚』
 アンケート「初めて蓄音機を聞いた時」 大11 『新家庭』第7巻第6号
 〃  「山と海」          昭5 『アスレチツクス』第8巻第8号
 〃  「上州とし聞けば思ひ出すもの、事、人物」        昭10『上州詩人』第17号
雑纂「HENRI-MATISSEの画論(一)前書き」 明42『スバル』第1年第9号
 〃 「略歴」                     昭4『現代日本詩集現代日本漢詩集』
 〃 「前田鉄之助詩集『父童子自然』と諸家の言葉」   昭8 『詩洋』第10年6月号
 〃 「高村光太郎作 木彫小品・色紙・短冊頒布」    昭13 『大熊座』第1年春期版
 〃 「回顧三十年感謝晩餐会御挨拶(速記)」      昭17 『図書』第83号
 〃 「細田明子結婚記念帳に」             昭29 『細田明子結婚記念帳』
短句8篇                        昭和期
対談「「朝の訪問」[未放送]」             昭24
翻訳「J・K・HUYSMANSの『巴里の写生』(四)[○旋頭歌]」 明43『スバル』第2年第2号
 
この後、書簡、題字等、参考作品、智恵子書簡、全集解題補遺と続きますが、長くなるので明日に回します。
 
手許に若干の残部があります。ご希望の方には送料のみにてお分けいたしますのでお声がけ下さい。